夏の日のポートレイト/山中 烏流
とぼけた顔で写る、家族写真の度
食卓には痛み止めばかりが並び
学生はいない
当たり前に
不親切な人の群れは総じて新宿方面に流れるから
指差し確認の習得は必須条件だった
肌の燃えた日に、少しだけ足は遅くなって
私は水飲み場に消えた
ビート板を細かく千切ったのは、先生、僕です
今月三回目の検診を終えた工藤さんの机は汚い
有名なブランドの鞄の中は
真っ白な海
いずれ大きくなる体を憎む君が
ゆっくりと東京行きの電車へ歩いていく
朝に震える日を繰り返しながら
木漏れ日に沈んで
浄水場で数えた烏の数を
忘れても
忘れても
走る児童の影を追いかけて数年
コップの中身が見当たらない
心臓も肺も、その他諸々も痛むこれから
待合室の匂いが
つん、と一刺し
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