空からの手紙 /服部 剛
 
久しぶりの実家へ歩く道の途中で 
幼い頃からあったガソリンスタンドが 
跡形も無い、さら地になっていた 

少年時代にキャッチボールをした 
友達の古い家と庭を塗り潰すように
まあたらしい家が、建っていた 

遠くにざわめく新緑の山々と
教会の鐘の音が 
あの頃と変わらぬ五月の風の唄声で 
ふと、立ち止まる
僕の名前を呼んでいた

いつのまにか大人と言われる年齢(とし)になり 
もうすぐ父親になる 
僕の足元に 
遠い空からひらひら一枚、八重桜の花 







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