外国に行けない僕/御笠川マコト
 
外国に行けない僕は
英字新聞を持って
どこの駅前にでもある店で
値段の安いブレンドを啜っている

外国に行けない僕は
百貨店の一階をわざとゆっくり歩いて
強い香水の匂いを
鼻の奥に転写している

外国に行けない僕は
ガイドブックを何度も立ち読みしてるから
見たことのない街の地図が
目の奥に刷り込まれている

僕はまた外国に行きたい

正直に言える
外国に行かない僕は
まだ僕ではない
外国に行ってはじめて
僕が僕になる
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