便りがないのはよい便り/あおば
 
も諦めるしかない

先行きの見込みが薄いから
田畑を畳み
上京しようとも考えているようですが
中年を過ぎての新たな東京での立生の道は
近頃、想像以上に難しいですから
ここのところは思いとどまった方が良いと小生考えますと
考えるのが下手くそな父の几帳面な文字が浮かび上がり
無骨だが
意味だけは通じるそのことばに
戦友は古里に留まったようで
その後の便りの有無は分からない
無口な父がことばを向けるのは
家族以外の利害関係のない人で
その流暢な東京弁には驚かされる
なんて具体的で分かりやすい説明なんでしょうと
感嘆の世辞を聞く度に
端から頭の上がらない相手がここにも居たんだなと
便りのないことをいいことに決めつけた





「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作を修正。タイトルは、ひかり。さん


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