桃の花/鵜飼千代子
雛菓子をつまむ指先の
その感触は
母さまの温もり
ひとつまみ
もうひとつまみと
雛の飾りから拝借する君の
当(あ)て所(ど)ない戯(たわむ)れは
長き連合(つれあ)いの掌(たなごころ)の内(うち)
「暫(しばら)くすると 足してある」
いつになく
幾度も同じ話をする君を
慈しみ 今、偲ぶ
?婆さん?と
女子学生のような時を刻もう
「あらあら、これは」と
顔を見合せ
くすくす笑いをしながら
平成二十三年二月二十七日
初出 詩誌「焔(ほのお)」第88号 所収
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