地勢が、波の舌、波の騎馬で…/石川敬大
あんなところまで
かけあがってゆく脚力があった
なんて、知らなかった
あれが
かけのぼってゆく波のペニスだったなんて
美しい波形
コバルトブルー
夏の日に
波とたわむれていた
子どものKがいた
Kの両親と姉たちがいた
うらがえりうらがえす波うらぎりの
まきあげる
波の舌
押し殺したうなり声をあげることもなく
しずかにちゃくじつに騎馬の歩をすすめてゆき
すえつけるほどのパワーがあった
波
地勢も波にさらわれて
地勢も風雨にえぐられて
ほろほろくずれてしまう
ほろほろこわれてしまったんだよ
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