地勢が、波の舌、波の騎馬で…/石川敬大
 



 あんなところまで
 かけあがってゆく脚力があった
 なんて、知らなかった
 あれが
 かけのぼってゆく波のペニスだったなんて

 美しい波形
 コバルトブルー
 夏の日に
 波とたわむれていた
 子どものKがいた
 Kの両親と姉たちがいた

 うらがえりうらがえす波うらぎりの
 まきあげる
 波の舌
 押し殺したうなり声をあげることもなく
 しずかにちゃくじつに騎馬の歩をすすめてゆき
 すえつけるほどのパワーがあった
 波
 地勢も波にさらわれて
 地勢も風雨にえぐられて
 ほろほろくずれてしまう
 ほろほろこわれてしまったんだよ


[次のページ]
戻る   Point(18)