雨/
蒲生万寿
私の生活が
思惑が
願いや祈りが
喜びや悲しみが
虚ろな無知が
不断なる憎しみが
この雨に
濡れそぼる
外で飼われている
年寄りの秋田犬が
人の通り掛かるのを
眺めている
口笛を吹きながら近付き
手を伸ばすと
犬はそっぽを向く
そばを眺めることもなく家路を急ぐ人の靴音が過ぎる
歩き出した私の鼻先に香る
夏の薔薇
庭の樹々
雨の温気
私も眺めることなく
傍らを通り過ぎる
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