修羅の影ではなくて/石川敬大
 



 すでに川は
 平坦な静けさの原野にひとを集めて橋をつくり
 横たわる大蛇の骸であったから

 サンタクルス
 ナザレ海岸の大西洋の落日を眼鏡に映して
 修羅のあゆみはヨーロッパ大陸の西果てで足踏みしていた


 わたしの異名としての川は窓辺にたち


 草をわけて道をつくり
 ふたつの言語をよりあわせた笑顔で
 よしなしことを記す
 日記ではなく
 どこまでも私小説的であったことは妻と娘を奈落の底に
 突き落とすことをしたのだろうか


 すべてはゆめだった

    *

 脚にオレンジ色のミサンガをつけたカモシカがたっていた
 キ
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