一日/理来
今日は落日は見なかったな
見なかったな。小雨に覆われて
道行くケンタロウも見なかったな
ケンタロウの紐に引っ張られていくおじいさんも
やっぱり見なかったな
観察という行為が
とても少なくなった、以前と比べて
標識や電柱はただそこに貼り付けられているだけの
切り取り絵である
帰り路を急ぐ足だけが
妙に鍛えられている
時間の意味やその価値を天秤にかけることが
多くなった
これは大事
あっちはいらん
そっちは取っとけ
こっちはどうでもいい
すると、いつの間にか夜が次のページを繰っており
わたしは食卓についているのである
わたしという存在は
消去と発生の
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)