書き記さなければなにも残らないノートに/石川敬大
 



{引用=
海面からみあげるとこんもりとした森が公園である
ブランコと藤棚のフジ
それからベンチ
蛇行しながら遊歩道の鎌首をもたげる
ぼんやりした外灯がともる
雨ざらしの石段をのぼりきったところには
ふきさらしの東屋がある


スケッチできない風にふかれた


街の気配がクルマのかたちをしてのぼってくる
白線で区分されたスペースに小暗い表情でフロントガラスの顔が並ぶ
小枝や葉叢をふきぬけてくる風音は消音ブロックが奏でる
潮騒に似ている


さわがしい海(単数形である)のフシギ
さわがしい樹々(複数形になる)のフシギ


わたしを通りぬけられな
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