いのちの灯 /服部 剛
 
 葬儀場では僧侶がお経を唱え 
 遺された息子と母親はじっと 
 額縁から微笑むひとに 
 何かを、語りかけていた 

 お焼香の短い列に 
 思いの他早く僕は腰を上げ 
 額縁から微笑むひとに 
 両手をあわせる 

 (息子さんはずっと友達です) 
 と瞳を閉じた時 
 吸い上げられて光の国へ入った魂と 
 何年も前に駆けて逝った娘との再会が 
 脳裏に浮かんだ 

 祈りを終えて、振り返り 
 息子と母親に、礼をする。 
 母親の丸い瞳は 
 何も言わずに(ありがとう)と、僕に言う 

 僧侶が唱えていた
 親鸞上人の言葉 

 「 世の人の全
[次のページ]
戻る   Point(3)