いのちの灯 /服部 剛
葬儀場では僧侶がお経を唱え
遺された息子と母親はじっと
額縁から微笑むひとに
何かを、語りかけていた
お焼香の短い列に
思いの他早く僕は腰を上げ
額縁から微笑むひとに
両手をあわせる
(息子さんはずっと友達です)
と瞳を閉じた時
吸い上げられて光の国へ入った魂と
何年も前に駆けて逝った娘との再会が
脳裏に浮かんだ
祈りを終えて、振り返り
息子と母親に、礼をする。
母親の丸い瞳は
何も言わずに(ありがとう)と、僕に言う
僧侶が唱えていた
親鸞上人の言葉
「 世の人の全
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