新米親父の詩 ー胎児の合図ー /服部 剛
これからの僕は
嫌な上司のみみちい小言を、撥ね返す。
これからの僕は
苦手な注射も唇結んで、ぐっと耐える。
どうやら親父になるらしい
僕は自分の弱さを抱き締めながら
日常のあちらこちらから飛んで来る
サッカーボールの数々を
歓び勇んで、空へ蹴る。
嫁さんのふくらむ腹にあてた
新米親父の手のひらを
胎児の君の愛しい足が
合図のように、蹴ったから
児(こ)よ吾児(あこ)よ、君が地上に立った日は
足元の一つのボールを
力一杯、蹴り上げよ
桜吹雪の向こうの空へ
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