背番号「8」 /服部 剛
 


落合選手と王選手の違い 
前者はボールの真芯を、斬った 
後者はボールの数ミリ下を、叩いた 

あの日、引退試合の挨拶で 
ピッチャーのマウンドに立った原選手は 
赤く潤んだ瞳で「夢の種を植えます」と 
観客席とテレビの前のファンに、約束した。 

打席の土に根を張った 
落合選手と王選手も偉大だが 

僕は決して、忘れない 

控えのベンチから代打として 
唇を噛み締めながら、バットという刀を握り 
打席に向かって歩いた、震える背中を  

サードの守備で白球に飛び込み 
体が宙に浮いた、瞬間を 

ホームランの打球の虹がスタンドへ吸い込まれ 
幸せそうにホームベースへと走り 

観客席の僕を立ち上がらせた 
背番号「8」に見た、あの日の夢を。 







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