朝を迎える/はるな
騒がしい夜が好きだが、静かな夜も好きだ。静かな朝はもっと好きだ。愛しているといってもいいくらいに。
きょう、ここには静かな朝が来た。完璧な朝だ。空はつるりとしていて、朱から藍を見事に染め上げている。あいだに白をはさんで。街灯は眠りに近づきながら、さいごの明るさを放りなげている。すこし離れたものものはみな影絵をつくり、懐に逃げ遅れた夜を匿っている。ほんの時折、迷ったように鳥が飛んでいく。一幅の絵を動かすようだ。
わたしが朝を迎えることは少ない。
ほとんどの場合、わたしの朝は夜とひとつながりで、独立したものでなく、だから朝と言うよりも夜のしっぽのよう。人々が動き出す気配を感じてはじめて、
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