廃校に立つ未来の子どもたちに/石川敬大
 



 棚が倒れて割れた窓ガラスや試験管
 フラスコやビーカーが床に散乱している
 海水に浸された真綿が入るシャーレが傾いて静まっている
 実験室の椅子にすわるかれの顔をおぼえていない

 もちろんぼくだって
 黒板の前に立つ先生の後姿が
 蟷螂の羽のように透き通って脆くこわれる

 過去完了形のふるい写真のような学校に
 なぜぼくらはすみつづけることができないのか
 助けてほしいなんて言わない思わない
 なぜガレキのように死んではいけないのかを教えてほしい
 海のむこうの空のむこうに逃げ去って帰ってこない
 蜃気楼のような白雲を
 空の未来完了形を
 ぼくら
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