「春について」/青井とり
 
で、自分を見つめ直さなくてはいけません。
そして私は、いっそう古い私が嫌いになります。
このようにして、新しい私の需要は高まります。
私は、きっかり始業式までに、新しい私を製造し終えなければなりません。

人との出会いには、いつになっても慣れません。
新しい私は、ぎこちなく笑うことしか出来ません。
大して興味のない話に感動して見せて、大して面白くもない話に馬鹿者のように笑って、私は、そんな新しい私が嫌いになります。
折角の新しい私も、いつもそこで、全く台なしになってしまうのです。

このように、やはり私は、春という季節が少し苦手なのだと思います。
けれど、あの後ろ姿を見送り、柔らかく淡い色彩が力強さに代わると、不思議と切なくなります。
強い淋しさを感じます。

私は春が苦手です。
けれど、恐らくそれは、あの危なっかしく、気まぐれなものに、心を乱されているからなのでしょう。
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