私たちの世界/百瀬朝子
 
誰も批判しない箱の中
ぬくぬくしていて気持ちがいいよ
でもね、世界は
箱の外でまわっているの

  天の川は決壊しました
  あふれた星屑は
  流れて地上へ旅に出ます
  口を開ける子どもたち
  ちいさな内臓へと向かいます
  帰れない旅に出ます

月が満ちた
気づくのはひとりの夜

ワインのコルクが抜けない
後頭部の血管が千切れそう
右眼には違和感
セーターの赤い繊維が犯す
右手の人差し指で
眼球を冒す
ぐりぐりするけれど
違和感はぬぐえない

  一人暮らしは
  長すぎる家出のようだ
  ふらふらと
  渡り歩くのと
  何が違う
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