slide away / ****'99〜'03/小野 一縷
 
北 横殴りの吹雪 
厳しく美しい その事態を 知らない 彼らが
雪原で 凍えながら 夜空を見上げている きみのことを
南 さらさらした柔かな 砂浜の上で サングラス越しに
スクリーンから 眺めているよ



ああ
じんじんと 痛々しく輝く雪が
乾いて荒んだ 体の芯を 火照らす為に
頭の上に 降り積もってゆくよ
たらりたらりと
雪は融けて 頬を伝って 唇に


「苦い」


立ち尽くすのは 終りだ
きみは今 加速性と共に 指向性を授かった
きみには 力がある 仮初であれ 力がある


気違いじみた白さの 雪上を漕ぎ 
深い藍の 夜の下に潜り 
誰も
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