釈迦の夢 /服部 剛
金の光を体に帯びた
釈迦の言葉を聴きながら
緑の木々の下に坐る弟子達もすでに
金の光を帯びていた
夜の森の隅々にまで
不思議な言葉は沁み渡り
葉群の詩(うた)も
森全体にざわめいてゆくようだ
(白象は皆の脇で静かに丸くなっている)
私も彼等の和に吸い込まれて、坐る。
ぼんやり光る釈迦の顔と
瞳と瞳のあう瞬間(とき)
釈迦の瞳のレンズの内に
日常の私がちっぽけに、映る。
(この世の全ては、あなたの鏡・・・)
目を覚まし、布団から身を起こす。
窓外に咲く梅の枝で、鶯(うぐいす)が鳴いている。
一日の始まりにのびをする私の耳に
あの不思議な声だけが
今も遺っている
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