夢の核心 /服部 剛
磯辺の岩に立ち、風に吹かれていた。
僕の幻が、波上に輝く道を歩いていった。
浜辺に坐る妻はじっと、目を細めていた。
岩の上に立つ僕と
海の上を往く僕は
激しい春風に揺さぶられながら
ふたつの魂は引きあい
互いを結ぶ密かな長い糸の
結び目は
ぎゅっと、締まる。
水平線の彼方に
僕の幻が姿を消す頃
振り返り
潮騒の声援を背に受けて
岩間を快活にも跨(また)いで、僕は戻ってゆく
自然の糸に巻かれるように
遠くに小さく微笑む妻の許へ
背後の空から
この世界を照らす太陽のように
燦燦(さんさん)と輝きを増す
(夢の核心)を
波打つ胸に抱きながら
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