芋と言葉 /服部 剛
上野の美術館を出た帰り道
焼芋屋の車が、目に入った。
財布の懐が寒いので
「半切りをひとつ」と言い
小銭三枚をおじさんに手渡す
紙袋からほっくり顔を出す
焼芋をかじりながら
家路に着く人々に紛れて
夕暮れの上野公園を歩けば
焼芋を手渡す時に
「大きめの入れといたよ」と言った
おじさんの一言を思い出し
紙袋から昇る白いゆげが、目に染みた。
日々の仕事に慣れてしまった僕の言葉は
焼芋屋のおじさんの言葉のように
誰かを暖められるだろうか?
これからは一日一回
隣の人に渡してみよう
ゆげの昇った一言を
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