日の丸の旗 ーSAVE JAPANー /服部 剛
 
 三月十一日・午後二時四十六分、彼はデイ
サービスの廊下でお婆さんと歩いていた。前
方の車椅子のお爺さんが「地震だ」と言った
次の瞬間、壁の絵は傾き、施設は揺さぶられ
る海上の船となった。都内で働く妻と鎌倉の
実家に電話連絡で無事を確認し、彼は安堵の
溜息を漏らした。 

 テレビ画面に映る仙台の街を津波は覆い隠
し、流されるいくつもの家が炎を上げていた。 
お年寄りをそれぞれの家に送る車が国道に出
ると信号は消えて大渋滞となった。仕事帰り
のコンビニの棚に食料はすでに姿を消し、ガ
ソリンスタンドは何処も給油待ちの車が、列
を成していた。 
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