子供騙し/光井 新
ぷかりと浮いていたんだ。ひっくり返ったまま、動こうとはしなかった。さらさらと、機械的に水が循環されていて、流されていたよ。あの赤は、まだ子供だった僕の血だ。
硝子の壁が、ふわりと、花柄のスカートに見えた。花柄のスカートっていうのはママの拘りでね、色んな花柄のスカートをママは毎日穿いていた。自分では覚えていないけれど、ミキハウスのロンパースを着せられていた頃の僕は、ママが穿いている花柄のスカートの中に潜り込むのが大好きだったらしいんだ。硝子の壁はパパの趣味でさ、僕が育った家の四角いリビングは、北側の壁一面が水槽になっていて、これまた覚えていないけれど、僕が幼稚園に入るまでは、金属片みたいなアロ
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