【批評祭遅刻作品】殺し、やわらかい雨の中で(山茶花オクリ讃1)/渡邉建志
 
ました。よく磨かれたミニの窓はいつも真透明で、
道路側に坐るムスカが器材を弄るときには、ハミルは手で覆ったライターを翳す係
です。細心の注意を払うムスカに、ハミルはわくわくした試しがありません。ただ
ムスカのチンピラぶりったら、いつぞやに自販機の前に車を停めたときなど酷く、
冷却器のブーーーン、に「車を出せ!」と怒鳴れば、目玉を剥ききって気絶するこ
とがありましたし、眼科ひとえにはその後も2回通っています。不憫であるとは同
情を強いることです。
 なにか調節をしたのか、女の声は鮮明になっていきました。鼓膜をくすぐるよう
な、パン、パン、という音に口端で泡がはじけるような錯覚を感じた
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