【批評祭参加作品】朗読についていくつか/rabbitfighter
語りかける力を失った朗読は、ずっと昔に行く道を分かれた兄弟たちの力を借りようとする。演劇や音楽の力を借りて、一応の成功を収めたかのように見えるそれらはしかし、安易であるがゆえに、見え透いてしまう。鉄筋コンクリート造の城のような佇まいだ。
ただし、そこから生まれてくるかもしれない新しいものの可能性を否定しない。演劇や詩小説を栄養にして育った映画のような新しい芸術が生まれる可能性を、むしろ想像したい。
それでは朗読は、古代の遺跡として砂漠の中に立ちすくんでいるべきなのか。
僕はそうは思わない。今でもまだ、99篇の力無い朗読の中に、一遍の力を持った言葉を耳にすることがあるからだ。そのような朗読に響いた心を、僕は知っているからだ。なにもミリオンセラーのヒットソングと肩を並べたいわけじゃない。ただ一遍の言葉の塊に、心が震える。その場にいる人にしか共有できないようなささやかな、だけど尊い感覚。そんな言葉の響きに、何度でも、何度でも心を響かせたい。そんなことを願っている。
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