【批評祭参加作品】詩と小説の境目「とげ抜き」について/石川敬大
 
 これは小説とだれかが言えば小説になり、これは詩だと言えば詩になるなどと戯けたことが通用したのでは裏社会の論理と同じではないか。唯一神の御託宣じゃあるまいし、そんな無名性の内にあるだれかの主観だけで、文芸のカテゴリーが決定されるなんてことが絶対あってはならない。だが、そういったことがいま罷り通ろうとしている。まぁそれだけ混乱したボーダーレス的状況にあるのだともいえるのだろう。俳句や短歌なら、客観的な物差しとしての大まかな文字数によって厳密に区分することができる。五行詩や七行詩でも、やはり明確な物差しがある。飯島耕一が詩にも定型をとか、入沢康夫が明治期には存在していた叙事詩を切り捨てるように成立して
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