【批評祭参加作品】石原吉郎の可能性 ー石原吉郎試論ー/石川敬大
に思われた。しかし石原の詩は、それらの全てを受け入れたとしても時に美しく、儚く、歯切れよく、尊敬するに足る資質を持ち合わせた詩人であることもまた確かなことのように思われるのだ。
吉原幸子と同じく生前、石原と親交があった清水昶は、鮎川信夫、谷川俊太郎との対談の席で、「石原吉郎論を書いた最初、とにかく体験の落差がある、これはもうかなわない」と発言したさい、これを受けて鮎川は「体験から離れたかったんじゃないかね。体験と無関係でも美と感ずるような世界をつくりたかったんじゃないか」と返しているが、詩とは言葉による世界の構築であるから、どんなにすごい体験をした人の詩作品であっても、詩が誕生した元の体験に還
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