かぐや指/salco
 
さあ! 肉なんざどうでもいいよ。好きなだけくれてやるわ」
 と、今度は牙ならぬ部分入れ歯をすぼめた唇に収め、猫撫で声を出すの
でした。
「本当かい」
「皮はあたしのもんだからね。脇から剥ぐんだ、腹を傷つけないように」
「何でまた」
「何でもさ」
 このごうつくばりが何の気紛れで噛み切れもしない皮など欲しがるの
か。お爺さんは目ざとくいぶかしんだのですが、いかんせん白内障で何で
もぼんやり霞んで見える為、この腹の輝きが見分けられません。まさにお
婆さんの思うツボでした。

 臭いとは言え腐っても何とやら、一刻も早く可愛い舌を喜ばせてやりた
いと盛んに唾液を分泌しながら、お爺
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