幸福の本 /服部 剛
 
私という人間は、一冊の本なのです。 

四角いからだに手足を生やし 
不恰好に揺れながら 
人々の間を往くのです 

私が通り過ぎる時 
誰もが振り返り 
「何だい奴は」と嗤(わら)います 

こんな私もいざ、という日は 
思い切って自らの身を、開きます。 

その字面(じづら)に埋め尽くされた頁(ページ)の宇宙に 
たった一行の空白があり 
 「      」 
あなたをぱたん、と閉じ込めます。 







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