ノスタルジックな軽便鉄道の駅頭にて/石川敬大
 



 草のなかにレールをみつけた
 錆びた鉄の平行な二本線が
 弓なりに
 ここから延びていた
 または
 この草のなかで
 すっぱりと裁断されて尽きていた

 あおぐらい記憶の軽便鉄道の小さな駅頭で
 いつくるとも知れない列車を
 待っていたことがある

 いつのことだったろう、おぼえていないが
 でも、もしかしたら、それは
 読書体験か
 夢だったのかもしれない

     *

 あおぐらいホームの端の
 赤いシグナルが空にむかって点滅すると
 いつのころからか失っていた大切なオモチャの列車が
 ガシガシと白い煙をはきながらやってきて
 
[次のページ]
戻る   Point(20)