ムニエル/純太
夕暮れ部屋の中で
君はキットカットと
出掛ける支度に夢中
俺は鱈のムニエル作りに夢中
いつものまな板の周りに
時々の鱈が甘塩で二切れ
その親愛なる白身を
俺から奪わんとするエノキとシメジが
そっとそばにいる
けれどもう小麦粉が
鱈を抱きしめたからダメさ
バターは冷蔵庫宮殿の中で時を待ち
胡椒は・・・何か悩んでいる
俺が男だから
今日は彼女じゃないから我が家にいる丸大豆醤油は
どこ吹く風だ
たくさん使ってもらいたいくせに
ガスの色気でちょいとフライパンを熱くさせ
バターが宿命のように溶けてくれた
俺とフライパンはニンマリしながら
鱈とエノキとシメジ
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