イチノセと月/木製金属
光が届くまで、一千光年の夜
何もしないのと、何もできないのは別物
今日は何もしない夜
そう決め込んで迎える朝は
いつも後悔ばかりなのだけれど
新川のセブンの店員がかわいいと
イチノセが煙草をふかしながらそう言った
緑色のノースフェイスの薄手のダウンで
ハイライトのメンソール買ったら
『みどりすきなんですね』
と言われたっていってきた
少しイラっとしたけど
少しうらやましいと思った
イチノセは美容師でイケメン
だけど最近疲れてる
なんかなんだか話したそうだが
何もしゃべらずゲームした夜
言葉が届くまで、一万光年の夜
本当は言わなければならないことがある
でも
聞かれなければしゃべるまいとする心
聞かないキミ
言わないボク
それを押し込めて生きる日々
すっぽ抜けたカーブボール
落ちないまんまで
届かないまんま
答えは出ている
想いが届くまで、一億光年の夜
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