『沈む月』/あおい満月
 
確たるものばかりを求めていた
砂つぶてにしかすぎない自分に気がつかなかった
凡庸な日々に
埋もれ死んでいくのが怖かっただけだった
この歯を、
この腕を滅した理由を未だ知らない
診断書に記載された
理由欄の「不明」という行書体の文字が
風に凪いでいた

今では、
笑い話に黙されることに感じる刹那の憤りに
最後の意地を張ってみる

「赦さない」

深夜の窓硝子に書いた文字が
流血のように滲んでいく
眠りに就けない
涙を煽るように
焼酎を飲み干し

西に沈む月を仰ぐ


平成二十三年一月三日(月)
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