横須賀の港でぼくは猫にうんざりしていた/石川敬大
 
を建てたけれど
 ぼくが出ていった
 Kの実家の土地だったから


 横須賀に住んだ
 京浜急行で通勤した


 イージス艦だか駆逐艦が民間人の目を灰色に拒絶していた
 港にも酒場にもМPと日本人の娘と米国軍人がたくさんいた
 夜の繁華街を赤ら面で歩いていた
 カタコト英語で黒人と語りあったことがある
 母国や家族とはなれてさびしいとかれは泣いた
 ぼくもここではひとりだった

 横須賀の港にも
 のら猫がたくさんいた
 でも
 もうぼくは
 どんな猫にもうんざりしていた





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