ぼくは帰る / ****同/小野 一縷
だけれど
まだ格好つけたままだ 阿呆で意地っ張りだから
馬鹿みたいなことばかりして すっかり体を悪くした
だけれど
ばあちゃんはいつも僕のことをじいちゃんに拝んでいた
僕の火傷のことを気にかけて
僕はそれで辛くなったことなど一度も無いのに
だけれど
ばあちゃんは拝んでいた ばあちゃんは何も悪くないのに
僕みたいなろくでなしの為に
だいぶ耳が遠くなったばあちゃん
電話で僕に「彼女は元気か」と聞いてきた
「別れたよ」と言ったら「まあ どうして」って
いつも僕のことをじいちゃんに拝んでいたのにと
いつも僕のことを仏様にも拝んでいたのにと
僕みたいなろくでなしの為に
ばあちゃん
僕は帰るよ 雪の中
誰も知らない 僕だけが知っている来た道を
ほら 凄く吹いてきたよ
だけれど ほら まだ かなり家は遠い
寒さが厳しいけれど 顔を伏せずに
乞食の犬のように あっちへこっちへ いくら吠えても
見てみろよ
地吹雪の向こうに
阿呆みたいにさ
子供の頃の僕が 笑ってる
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