舟を漕ぎおわって陸地にたつと/石川敬大
 



 ゆうべはねむれないまま舟を漕いだ
 ねむれないまま舟を操り蘆を払って湖沼をすすんだ

 朦朧とねむれないままもとの舟着場にもどる
 と、先がみえない霧のなかを漂流していたことがわかる
 つまり
 めざめていたのでも
 ねむっていたのでもないことが

 草木もねむる三時
 うしみつどきの草木のねいきが
 湖沼の水面をわたってくるようだった

     *

 地球の裏側のオフィスで
 公園で、地下鉄のホーム、コーヒーショップで
 あるいたり/たちどまったり/坐って
 頬づえをついたりしている
 見知らぬおんなたちのことをおもう

     *
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