忠犬のように /服部 剛
 
僕より年上の君は、あの日  
(つきあっちゃいけない・・・)
と複雑な女心を語ったけれど 

一年ほど前に君は 
仕事帰りに待ち合わせた 
神保町の珈琲店「さぼうる」の
向かいの席に煌く瞳で、現れた。  

昨夜の晩飯は 
仕事帰りの焼肉屋で、一人 
店員の韓国人のおばちゃんが 
「夫婦ハ一心同体ヨ」と言っていたが 

結婚して半年近い僕は  
「いってきます」の朝から 
「ただいま」の夜まで 
ブーメランを追いかけて 
咥えて戻る忠犬の如く 
君が降りてくるバスの前まで歩き 
白い吐息を昇らせながら待つ日々です  

そして今夜は一年前と同じ 
初め
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