スコッチ/洋輔
いいかげん汚くなったこの部屋に
掃除機をかけたら
大切なものがひとつひとつ
すいこまれていった気がした
僕はまちがっていたのだろうか
映画のシーンのようには
僕はできなかったよ
ああこれで最期なんだなと思っても
僕はおまえを静かに去らせた
いつものように送ることはせずに
背中を見送ることもせずに
僕は音が立たぬよう扉を閉じた
悲しみを覚えることはなかった
そこにあるのは僕の甘さ
何物も残すことは許さなかった
思い出も
そこにあるのは寂寥
それだけを許した
スコッチをあおりながら
つぶやいてしまいそうになった言葉を
のみこんだ
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