フェリー埠頭にて / ****`04/小野 一縷
 
黒く輝く夜
遠く白亜の列柱が順次砂時計の白い砂のように崩れ流れる
流れる白い粉
その冷たさに打たれる 雪遊び
子供たちの数え歌が懐かしく頭から湧いて口先に零れる
まるで童心だ しかし
氷山から手足の千切れた人体が転げ落ちてくる
不吉な夢想だ 拭えない不安が現出している証拠だ

ぐしゃりと潰れた顔の老人
踵の曲線ような老婆
爪先の間のムクレのような太い女
手の小指が信じがたいほど細い少女
右肘の折檻で負った火傷を隠す少年
何もかも倦んでしまった中年
何もかも欠落した青年
そんな連中が頭の中で暮らしてる

藍色の夜の満ち引き 夜の幕の波

容器の縁に吸着するター
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