甘酒の味 /服部 剛
初めてあいさつに行ったあの日
「箸にも棒にも引っ掛からん奴だ!」
と言われ互いにテーブルを平手で叩いた
嫁さんの父さんが
同居を始めて数日後
仕事から帰り
下の階で勉強する僕を
「剛君」と呼び
麻痺の残る体でよたよた
冬の冷たい廊下を歩き
あったかい甘酒を、手渡してくれた
「手伝うことがあれば呼んで下さい」
と言い下の階に来た勉強嫌いな僕も
甘酒をひと口啜れば
何故か、やる気が湧いて来る
(娘を、頼む・・・)
老いた父さんの無言の声が
ひとすじの湯気となり
湯呑みの上に、昇っている
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