『氷のなかに咲く花』/あおい満月
到達出来ない極みがある
それは遥かなる山上の氷のなかに咲く花のように
近づこうとして
近づいてはいけない
わたしは、
ビニール袋を口にあてがう過呼吸症候群患者のように
ことばの捌け口を未だ知らない
何故なら、
わたしも氷のなかに咲く花だから
誰も溶かしてはくれない
否、
殺す値打ちのないものになど関心がないのだろう
悲しみも喜びも素通りして、
あなたには何が見えましたか
わたしには何が見えましたか
向かう意思さえ見えないままに、
今日も硝子の箱は
待つべき人の待つホームへ向かいます
鞘のない刀は
いつか錆びますか
氷のなかに咲く花は
溶かす人の手を燃やすでしょう
そのなかの愛の行方は自滅という未来でしょうか
平成二十二年十二月二十五日(土)
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