夜の灯 /服部 剛
退職した職員とこじれ
くたびれた顔をしていた呑気な社長が
一人残って書類の仕事をする僕のもとへ
ふらりと、やって来た
お客様の心無い罵声を浴びて
机に顔を伏せていたまじめな先輩も
つられたように
うつむきながら、やって来た
もう一人の陽気な先輩が
日中の仕事で
認知症の婆ちゃんに叱られた僕をネタに
3人で囲んで、からかって
( 僕はふんふん頷きながら
キーボードを、叩き続けた・・・ )
話のネタも尽きた頃・・・
陽気な先輩はいつのまにか、姿を消していた
まじめな先輩はちらりと見て「じゃあな」と帰った
呑気な社長は「服部クン飯でも食おうよぉ」ととぼとぼ帰った
( そんな風に虫達はいつも
夜の仄かな灯りに吸い寄せられる・・・ )
日中険しい顔をしていた人達の
眉間のしわが
いくらか緩んだ、残業のひと時。
戻る 編 削 Point(2)