色の無いエビ/Seia
落とされた 水の中に落とされた
炭酸水に落としたストローみたいに
体に付着した泡が昇っていく
キラキラと輝く水面に
青白い手が見えた
一匹だけ はぐれた回遊魚が迷い
かろうじて海だとわかる程度で
何故ここにいるのかはわからなくて
木の葉のような船底が
うつらうつらしている
ただ 息をしなくても
苦しくない事がわかった
だんだんと 命の数が減る変わりに
タイムマシンで時代を遡って見たような
不思議で奇妙な命が増えていく
いつまでも 底が見えない
終わりはくるのだろうか
今になり 思い出した事がある
ここに居るのは私が望んだ事で
あの時見えた手は
それを頼んだ人だという事
マリンスノーの吹雪を越え
たどり着いた 海の底
かつて足だったものを
色の無いエビがつまんでいた
そろそろ 空へ帰るべきだろうか
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