世界のこと/はるな
 
はなぜだろう?
自転車のブレーキの響く音に。背もたれにかかった父のスラックスに。枯れかけた仏壇の花に。ざらついた本の拍子に。何気ない日常のすべてに。
それはいつも当然のようにあって、たぶんこれからも少しずつ変わりながらではあってもここにあって、それなのになつかしくなるのはなぜだろう?近しく、そしてぼんやりと遠い。なぜそんな気持ちになるのだろう。
わたしは生きることに向いていない。すくなくとも動物にむいていない。そんな気持ちがする。
みすぎてしまうのだ。世界は美しく、大きい。わたしは恵まれている。やっていけないのだ。世界は美しく、わたしは小さい。わたしは無力で、世界は途方もなくやさしい。そし
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