パカッと割れた苦悩なんかない/石川敬大
 



 なにが有効な手なのか
 わからないままに
 かれは
 もう、とっくに
 地図に表記されていない場所にきていた

 音がない
 姿がない
 赤い血が
 ながれることのない草がない言葉の荒野に
 ヘリコプターが頭上で静かにホバリングしている
 みえない電波を送受信している


 そのときにも逡巡する


 かれもたしかに
 日本人の気質をもちあわせているのだろう
 期限が迫り
 なげやりな気分に陥る
 いや、窮地から脱したい
  ―― ふりだしにもどそう
 でも
 ふりだしって
 どこにあるのだろう

 モニターの耳や目に頼らず
 
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