「荒地」を読むための諸前提 2/るか
後の復興の道程にも、マルクス主義的な左翼の方向性とも異なる独自の詩的
な仮構であって、故に鮎川は自己を「必敗者」と高らかに宣言して憚らなかった
。時代の流れとは一線を画して存在し続けるその敗残の場所には、戦死した詩友
の姿があったことでしょう。このように戦争体験に固執してそれを押し流して進
もうとする時代の流れに反抗する姿勢は、後続の、吉本隆明にあって、より明瞭
に現れてくるのでした。
続
引用:現代詩手帖1月臨時増刊荒地戦後詩の原点(1972、思潮社)
鮎川信夫 1937-1970 鮎川信夫自撰詩集(1971、立風書房)
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