「荒地」を読むための諸前提 1/るか
 
ともいえないことはない。しかし、多くの人々の感情は生活再建に
必死であり閉ざされていたことが想像できます。そのような中で人々の
心を慰め、ひらき、互いに出合わせるような詩の言葉は、現実の暗さ厳
しさを冷徹にみきわめ、分かち合うような詩であり、それら外的現実
(時代)の、詩世界のなかへの受け入れであったことでしょう。もし私
たちの未来や明るさといったものが、たんに現実の暗い面には目を閉ざ
すことによって守られうるものだったとしたならば、そのような明るさ
はひとつの脆弱な仮構であり、砂上の楼閣に過ぎません。過去の詩を読
むことは同時に、その詩が書かれていた時代というものを、自分のもの
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