実家にて/小川麻由美
猫のチャチャが居ないというもどかしさ
この世の一部を占めていたけど
もう空間を占拠していない
改めて嫌な確認をした
みんな空気を掻き分け存在する
尽きた者は広がっていく
猫のチャチャの思い出話をする余裕が出た
しかし実家のドアは増えていた
聞かずとも両親の思いは通じる
実家へ帰るたび何かが増えている
インターネットができない環境
初老の両親はパソコンを使わない
緑ならではの美
ノスタルジアにかられる
亡命などしたわけではないのに
実家で過ごした日々は
モノトーンならではの美
子供に帰る私は天然色を取り戻す
かけがえのない時間
かけがえのないものを
いつくしむかけがえのない気持ち
猫のチャチャがいなくなって
いとおしさが増す
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