火山島、炎の魚/対の影/石川敬大
しわくちゃなので静かな紙面に舟を浮かべると
宙の上で均衡がとれるように
その点において
静置する
対になるその
たゆたう舟の影も
水底でしわをつくって静置するだろう
青く透きとおった縞の
水のなかでも
魚は
炎につつまれている
生きものは
みんな炎を吐瀉している
*
しわくちゃなので静かな海面から突出した
こんなにも急峻な火山の島はかつてみたことがない
肩先から炎をふきあげる
空が
水の静かさだ
なぜメコン川で
なぜ水草に、憎しみに似た悪意を感じるのか
茶色く濁った澱みに棲息している
尾鰭をふる
ぼくは
魚
海面のてっぺんで霞む
青く透きとおった水の夢をみている
静置するのは縞をもつ舟の影
しわくちゃなので静かな紙の裏面の舞台で
ぼくの
魚は
鬼の形相をして
泥の炎を吐瀉したりする
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