昆虫と私/三条麗菜
 

その音を聞くためだけに生きていて
昆虫にとって幸せとは
その音がいかにこの世界に
満ちているかということです

さららさらら
さらさら
さららさらら
さらさら


その音は太陽と風が
力強く存在する証です
この大いなる恋人たちは
無数の昆虫たちの
祝福を受けるのです

悪童の補虫網に叩きつけられ
半分壊れかかった体でも
その音さえあれば
死は怖くない
怖くない

私はあの恋人たちの
愛の結晶となり
命を宿して
再び生まれてくるのです

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